10月26日、27日函館の地で開催された全国自立援助ホーム協議会に参加させていただきました。
全国大会は今年で18回目、全国で自立援助ホームは今や77箇所となり、今回の大会への参加者数は200名近くにも及び盛大な会となりました。
児童精神科医の田中康雄先生の基調講演、北海道大学の松本伊智朗先生からのご提言等専門家の先生方からのお話、厚労省からの行政説明もしていただき、貴重な学びを得ると共に、私が何よりも心を打たれたのは、各ホームでの事例発表でした。
一日目の分科会、二日目のシンポジウム、ぞれぞれで各ホームが携わってきた大変なケースを通し、私たちの支援のあり方、そもそも自立援助ホームが担う役割と責任は何かを改めて考える時間をいただきました。
私はAホームでの性虐待の被害を幼い頃から受け続けてきた事例を聞きながら、この事例を社会で生きる全ての大人たちに聞いてほしいという思いに駆られました。
彼女が受けて来た被害の重さ、奪われた子ども時代、虐待によって引き起こされる様々な症状、それに必死に関わる自立援助ホーム職員の姿、…虐待が引き起こす深刻な症状と共に、彼女を巡って、彼女が思春期と呼ばれる年齢になるまで、教育も福祉も医療も全く携わることができなかったというこの事実を、社会皆で共有しなければと感じました。
自立援助ホーム職員は、傷ついた子どもたちを支援する行程のなかで、いかに自分たちが無力であるかということに苛まれながら、闘いながら日々必死に支援をしています。
子どもたちと生活を共にする私たちの支援のありようが問われることはもちろんのことですが、この「社会の無関心」にどう向き合っていくかも自立援助ホーム職員の役割としてとても大事なことではないかと思いました。
本当に子どもを守るためには、理想や理念、心がけだけでは変わらない
立派な法律だけでは変わらない
理念や法律を遵守するための教育の見直し、制度の改正、予算の増額全てが必要です
私たちの社会は子どもたちの健全な養育の為に、十分なお金を費やしてはいません
児童虐待にある根本的な問題についてもまだまだ理解はされていません
私たちの社会は「自分の子ども」という視点においては十分すぎるほどの関心や注意力を持って関わっているかもしれませんが、「社会の子ども」という視点においてはまだまだ無関心の域を出てはいないと感じてなりません
私自身も「“社会の子ども”に無関心な社会」を形成している社会の一員です
社会的養護に携わる者として、一児の母親として、ひとりの人間として、自分に出来ること、すべきことをやります。
自立援助ホーム湘南つばさの家の前川さんのお話
施設を退所した子どもたちは失敗することが許されない
生きづらさを抱えさせられた子どもたちが、社会に出て、失敗が出来ない環境に生き続けなければならない
失敗を保障してくれる家庭という寄る辺がない彼らに
失敗を保障してあげられるのは社会しかない
失敗の保障は決して社会の損失にはならないです
むしろ、その保障が社会の資源として、成長として還元されるものになると私は心から思います(もっと安心できる、のびやかで懐の深い社会の土壌があれば、児童虐待問題も、少子化の問題も緩和されるのではないかと思えてなりません)
失敗を保障できる社会になってほしいと強く願います
「生きていてよかった」と退所者が、ホームを退所してから10年以上たった後伝えてくれた言葉。その言葉を宝物のように、大切に大切に心に持っている前川さん
終わりのない、ゴールのみえない日々の支援のなかで、きっとどこかで
「あきらめないでよかった」と思える瞬間が来ることを伝えてもらったような気がします
日々奮闘している全国の自立援助ホームのスタッフの方々が健康でホームを継続していけることを心より願っています