9月も後半をむかえたのに、残暑厳しい毎日が続いていますね。
それでも、朝晩は初秋のすずやかな空気を感じます。
今日はゆずりはは閉館日でしたが、相談依頼を受け出張面会と、講演会に参加してきました。
参加した講演会のお話を少し書かせていただきます。
ゆずりはを支援してくださっているMさんのご紹介で、愛知県岡崎市にある吉村医院(映画監督川瀬直美さんの作品「玄牝」の舞台にもなっています)という自然出産でとても有名な病院で助産婦をされておられた岡野眞規代さんの講演会に参加させていただきました。
岡野さんは自然出産をとおしてみえる、現代社会についての在り方、日本人が古来もつ感性や美意識の素晴らしさ、命について語られ、2時間のお話のなかに笑いあり、涙ありの一言では語り尽くせないたくさんのエッセンスのつまったお話でした。
私はお話を聞いている間ほぼずっと泣いていました。
感動や喜びや気づきの涙ではなく、自分が岡野さんの話を消化しきれない涙といってもいいかもしれません。
あすなろやゆずりはで出会った皆に思いを馳せると涙が止まらず、どういう理由での涙なのか自分にも説明のつかない涙があとからあとからでてきました。
私が社会的養護の現場で出会った子どもたちの多くは
「自分なんか産まれてくるんじゃなかった」「自分なんか生きる価値なんかない」と思ってきた(思いこまされてきた)子どもたちです。
私たちの想像を絶するような家庭環境で生きなければならなかった子もいます。
生まれてすぐ乳児院に預けられた子もいます。
親の顔も名前も知らない子もいます。
その子たちに「あなたが生まれてきたことには意味がある」という類の言葉は
今の私には言えません。そう言いきるだけの、子どもたちを納得させられる考えや哲学を持ち得ていないからです。
また「子どもが親を選んで生まれてくる」という言葉も私には言えません。
私に言えるのは、「選んでもいないし、選ばれてもない、どうであれ、あなたの命が、すべての命が尊いものであることに間違いない」ということのみです。
岡野さんは吉村医院でのお産をとおして学んだという、「命の本質」についてもわかりやすく率直に語ってくれました。
「命は受けいられて輝く」
「命がふくよかになる」
「命をいいかたちで連鎖させる」
…お話してくださるどれもが心をゆさぶられるエピソードばかりでした。
私は家庭環境に恵まれなかったり、親から暴力を受けたり、存在をも否定されてきた子どもたちに寄り添い支援する立場の者として、
「生まれた瞬間がどうであったか」をこだわることが出来ません。
「どこでどんなふうに生まれて、お母さんはどんな思いであなたを生んだか」
とてもとても大事なことだけど、そこにこだわりきることが出来ません。
お母さんにおむつを交えてもらったり、おっぱいをもらったりそんな経験も皆無の子たちに
「お母さんに感謝する」ことも安易には伝えられません。
今の私に出来ることは、出会ってきた子どもたちに「あなたに出会えてよかった、生まれてきてくれてありがとう」ということを私自身が心から伝えることのみです。
あすなろ荘やゆずりはを通して出会えたことに心から感謝して、私たちが目の前にいる子たちの命を全身全霊で肯定したいと、肯定し続けたいと思います。
すべての子どもたちが「自分の命を肯定できる」そんな社会にしたい
岡野さんのお話であふれるほどのいろんな思いを感じさせてもらいました。
ありがとうございました。